
相乗り出品(ハイジャック)の排除手順を解説
公開: 2026/7/20 / 更新: 2026/7/26
目次
自社の商品ページに他セラーが相乗り出品してきた場合、出品者が自力でその出品を削除する権利はありません。削除できるのはAmazonだけです。正規の排除ルートは3系統に集約されます。①テスト購入で証拠を集める方法、②知的財産権の侵害をAmazonに申告する方法、③ブランド登録(自社の商標をAmazonに登録して、商品ページの保護や専用機能を使えるようにする制度)をした人が使えるReport a Violation(違反報告)を利用する方法、の3つです。最も確実なのは登録商標+ブランド登録+Report a Violationの組み合わせですが、商標取得には数ヶ月かかるため、相乗りされてから動くのでは遅く、事前準備が実質的な防御策になります。
相乗り出品とは何か、なぜ自力で消せないのか
相乗り出品(リスティングハイジャック)とは、既存の商品ページに別の出品者が「出品する」ボタンから参入し、同じカタログページ上で価格競争を仕掛けてくる状態を指します。ここで言う商品ページは、同一ASIN(Amazonが商品1つずつに割り当てている10桁の商品コード)のページのことです。
Amazonのカタログは、メーカーと型番が同じ商品なら1つのページに統合される仕組みです。そのため正規品はもちろん、模倣品や無断転売品でも同じASINのページに相乗りできてしまいます。この構造上、ページの「所有者」であっても自分の判断だけで他の出品者を排除することはできません。日本のセラーフォーラムでも、正規ルートは①テスト購入による証拠収集、②知的財産権侵害の申告フォーム、③ブランド登録済みなら使えるBrand Registry(ブランド登録の英語での呼び方です)の機能、の3パターンに集約されると報告されています(出典: Amazonセラーフォーラム(日本))。
POINTPOINT
- 相乗り出品を消せる権限はAmazonだけが持つ
- 正規ルートは「証拠収集」「知財侵害申告」「Brand Registry」の3系統
- どのルートを選ぶかは商標の有無で決まる
商標権侵害を理由にReport a Violationで相乗り出品者を排除するには、実務上いくつかの条件を満たす必要があります。①登録商標を保有していること、②商品本体(パッケージやタグだけでなく製品自体)にその商標が刻印・印刷されていること、③カタログ画像でその刻印箇所が確認できること、の3点とされています(出典: toreru)。
カートボックスへの影響を先に押さえる
相乗りが起きると何が困るのか、数字で確認しておきます。カートボックス(商品ページの「カートに入れる」ボタンの獲得権。同じ商品を複数の出品者が売っている時に、誰の商品が売れるかを決めるものです)経由の売上は全体の7〜8割を占めるとされ、これを失うと該当ページの売上は激減します。相乗り出品者は典型的に正規価格より5〜15%引き下げてカートを奪いにいく傾向があり、極端な場合は定価の半額まで下げる事例も報告されています(出典: jagoo)。
つまり相乗り対策は「気分の問題」ではなく、売上の大部分を左右する優先度の高い対応です。価格を追いかけて対抗する事業者もいますが、それは摘発が完了するまでの短期的なつなぎに過ぎず、根本解決にはなりません。
セラサポでできること
セールの効果を、あとから振り返れていますか
セラサポはセール期間を売上グラフにハイライトします。前後比較が自動で出るので、値引きが本当に効いたのかを感覚ではなく数字で判断できます。
ブランド登録(Brand Registry)の要件と所要期間
ブランド登録とは、Amazonが提供する公式のブランド保護プログラムで、登録には日本の特許庁に「登録済み」または「出願中」の商標を保有していることが条件になります。ブランド登録の申請フォームでは商標登録番号または出願番号の入力が必須となるため、特許庁への出願を済ませておくことが実質的な前提条件になります。
ここで注意が必要なのは、商標が出願中(pending)のままブランド登録した場合、Report a Violationは商標が正式登録されるまで使えないという点です。つまり「登録できた」だけでは排除の武器はまだ手に入りません。出願中のまま長期間放置せず、下表の早期審査制度を使って正式登録まで進めることが、実質的な相乗り対策になります。
| 項目 | 目安期間 |
|---|---|
| ブランド登録の承認(Amazon公式目安) | 10営業日 |
| ブランド登録の承認(実務での実感値) | 2〜5週間(早いと3〜5日の報告も) |
| 日本の商標登録(通常審査) | 出願から7〜8ヶ月(審査平均約10ヶ月) |
| 日本の商標登録(早期審査制度) | 2〜3ヶ月 |
早期審査の対象となるには、出願商標をすでに自社で使用している事実に加え、第三者による無断使用(相乗り出品を含む)のおそれがあることを申立てる必要があります。単に「これから使う予定」という段階では対象外になる点に注意してください。

商標登録の特許庁費用は、1区分(商標で守る商品・サービスの分野の数え方です)であれば、出願時に3,400円×区分数、登録時に5年分で17,200円×区分数(10年分なら32,900円×区分数)かかり、合計44,900円からです。弁理士に依頼する場合は、この特許庁費用とは別に報酬がかかります(出典: 特許庁)。早期審査制度を使えば2〜3ヶ月まで短縮できるため、相乗りが起きてから慌てて出願するのではなく、新規ブランド展開の初期段階で並行して進めておくのが現実的です。
商標が未登録・未出願の段階でも保護機能に早期アクセスできる制度として、Amazon IP Acceleratorがあります。これはAmazon選定の提携法律事務所(日本では現在5事務所)を通じて商標出願を進めながら、違反報告など一部のブランド保護機能を先取りできる仕組みです。Amazonへの手数料はかかりませんが、提携弁護士への報酬は自己負担になります(出典: Amazon出品サービス公式)。
Report a Violationの使い方と最重要の落とし穴
Report a Violation(RAV)とは、ブランド登録者が使える違反報告ツールで、ASIN・商品名・注文番号・画像を使ってAmazonカタログ全体を検索し、著作権・特許・商標の侵害を申告できる機能です。一度に最大50件のASIN/URLをカンマ区切りで一括検索できます。
ここに実務上の最重要の落とし穴があります。ASIN全体(カタログページ全体)を侵害申告してはいけません。自分自身の出品もそのASINに乗っているため、ASIN全体を報告すると自分にもIP違反が発行されてしまうからです。正しくは商品ページの出品者一覧から相乗り出品者の個別オファー(そのASINに出品している、相乗り出品者自身の出品情報のことです)だけを選択して報告します。Amazonの通常対応時間は1〜3営業日とされています。
POINTPOINT
- Report a Violationは、ASIN全体ではなく「個別オファー」を選んで報告する
- 誤操作すると自分の出品にもIP違反がつくため必ず出品者一覧から個別オファーを選択
- 対応時間の目安は1〜3営業日
商標がない場合の代替ルート
商標を持っていない、またはまだ取れない場合でも、打つ手はあります。相手の商品が偽物ロゴなし・模倣品の場合は、セラーセントラルの「サポート」→「新しい問い合わせを作成」→「出品に関する問題」→「ガイドラインおよび規約違反の報告」の順に進み、ロゴの欠落や品質の相違、実害(悪いレビューなど)を具体的に記載して申告する方法があります。対象URLと自社正規品との相違点をできるだけ具体的に書くほど、審査がスムーズに進みやすくなります。
もうひとつの現実的な代替ルートは、相手商品をテスト購入して撮影し、自社商品との相違点をAmazonに提出する方法です。加えて、自社で撮影した商品画像を相乗り出品者が無断で使用している場合は、画像の著作権侵害を理由に知財申告する手段もあります。実際に日本語フォーラムでは、写真の無断使用を理由とした申告で相乗り出品者に取り下げさせた実例が報告されています(出典: Amazonセラーフォーラム(日本))。
反復被害を防ぐ予防機能
一度排除しても別の相乗り出品者が現れる反復被害には、恒久的な予防策が効きます。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| Brand Gating | 特定ASINに申請すると、以後の出品希望者に正規流通元の請求書提出とAmazonの承認を義務化 |
| Project Zero | AIによる自動スキャン、ブランドによるセルフ削除、製品固有シリアルコードでの真贋検証の3機能で構成 |
| Transparency | 製品コードによる真贋認証プログラム |
Brand Gatingを設定すると、以降そのASINに出品しようとする第三者セラーは、正規流通元からの請求書(インボイス)を提出しAmazonの承認を得ない限り出品できなくなります。申請はブランド登録ダッシュボードの保護機能メニューから行え、承認まで数営業日かかるケースがあります。Project Zeroは日本でも大手ブランドを対象にパイロット導入が進められており、対象ブランドはAmazonの審査を経て個別に招待されます(出典: Amazon出品サービス公式)。
反復被害が起きているブランド登録済みセラーは、都度の通報合戦より、こうした予防機能への切り替えの方が持続的です。日々のカート獲得率(カートボックスを獲得できている割合のことです)・価格の変化を継続的にモニタリングし、相乗り出現の兆候を早期に検知する体制を作ることも重要です。こうした指標の突き合わせは、セラサポのようなツールを使うと自動化できます。
実行手順のまとめ
- 証拠収集:相乗り出品者からテスト購入し、商品本体・パッケージ・ロゴを撮影して自社正規品との相違点を記録する
- ルート選択:登録商標とブランド登録があればReport a Violationで個別オファーのみ報告。商標が出願中なら正式登録を待つかIP Acceleratorを検討。商標がなければガイドライン違反通報か画像著作権侵害での申告
- 予防の恒久化:ブランド登録済みならBrand Gatingを設定し、反復被害があればProject Zero・Transparencyを検討
- 短期つなぎ:摘発完了までは価格対抗でカートを維持しつつ、最低販売価格ラインは割らない
POINTPOINT
- 商標なしでも「相違点の証拠化」「画像著作権侵害」の2ルートは使える
- 排除後は放置せずBrand Gatingで反復被害を予防する
- 価格対抗はあくまで摘発完了までの一時しのぎ
注意点:虚偽申告と牽制文言のリスク
排除の武器を持つことと、それを乱用することは別問題です。真正な流通品や侵害の程度が軽微な相乗り出品者に対して、「無許諾」を理由に一律でReport a Violationを申告して排除する事業者も存在します。Amazonの知財ポリシー上は正当な権利行使として扱われる場合が多いものの、事実と異なる内容を申告すれば「虚偽申告」としてAmazon自身の規約に抵触しうるため推奨はできません。
日本では虚偽申告を受けた側が、不正競争防止法第2条第1項第21号(競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽事実の告知・流布)や民法709条(不法行為)に基づいて損害賠償・差止めを勝ち取った判例があります。大阪地裁2023年5月では、著作権侵害を虚偽に主張した相手に対し、被告画像に「創作性がない」と認定され原告が勝訴しました。東京地裁2020年7月でも、虚偽の商標権侵害主張への差止めが認められています。
もし自分が虚偽の知財クレームを受けてアカウント停止された場合は、まずAmazonへの異議申立て(撤回依頼・Plan of Action。POAとも呼ばれる、改善計画書の提出のことです)を尽くし、それでも解決しなければ法的手段を検討する順序が現実的です。
また、出品ページの説明や画像に「商標取得済み」「相乗り出品禁止」といった文言を記載し、他セラーを心理的に牽制する手法はAmazonの出品規約違反に該当します。商品詳細ページを特定出品者の排除目的で使うことは認められていません。
よくある質問
相乗り出品者を通報したらすぐに削除されますか
即時ではありません。Report a Violationの通常対応時間は1〜3営業日とされています。テスト購入で証拠を揃えた上で申告すると、審査がスムーズに進みやすくなります。
ブランド登録していないと相乗りは一切排除できませんか
ブランド登録は必須要件ではありません。商標がない場合でも、テスト購入による相違点の証拠化や、自社画像の無断使用を理由とした著作権侵害申告で排除できたケースが報告されています。ただし対応の確実性・速度はブランド登録済みの方が高くなります。
Report a Violationで気をつけることは何ですか
ASIN全体ではなく、相乗り出品者の個別オファーだけを選んで報告することです。出品者一覧を確認せずASIN全体を報告すると、自分自身の出品にもIP違反がついてしまいます。
相乗りされている間、価格を下げてカートを守るべきですか
短期的なつなぎとしては有効ですが、根本解決にはなりません。相乗り出品者は正規価格より5〜15%引き下げてくる傾向があるため、際限のない値下げ合戦は利益を圧迫します。最低販売価格ラインを決めた上で、並行してブランド登録・Report a Violationによる排除を進めるのが現実的です。
商標を取得していれば相乗りは二度と起きませんか
完全には防げません。商標とブランド登録は排除を「早く確実に」行うための武器であり、予防にはBrand Gatingの設定が有効です。反復被害が続く場合はProject ZeroやTransparencyの活用も検討してください。
まとめ
相乗り出品は出品者が自力で消せず、Amazonの正規ルートを通す必要があります。最も確実なのは登録商標とブランド登録を組み合わせたReport a Violationで、申告時はASIN全体ではなく個別オファーを選ぶことが鉄則です。商標がなくてもテスト購入での証拠化や画像著作権侵害での申告という代替ルートがあり、排除後はBrand Gatingなどの予防機能で反復被害を防ぐことが、カート経由売上の7〜8割を守る最短ルートになります。
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