
損益分岐ACOSの計算方法|手数料込みで逆算
公開: 2026/7/20 / 更新: 2026/8/2
目次
損益分岐ACOSとは何か
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損益分岐ACOS(Break-Even ACOS。ACOSとは「広告費÷広告経由の売上」で計算する、広告の費用対効果を表す指標です)とは、広告費を投下する前の利益率と同じ値のことです。この数値を超えるACOSで広告を回すと、その商品の広告経由の売上は赤字になります。計算式は「(販売価格−Amazon販売手数料−FBA配送代行手数料等−商品原価)÷販売価格×100」です。ここでのFBAとは、Amazonの倉庫に商品を預けて保管・配送・カスタマー対応を任せる仕組みのことです。原価(COGS=仕入れ・製造・輸送・関税などを合計した、商品そのもののコストのことです)だけで計算すると、損益分岐ラインを過大評価してしまいます。その結果、実際には赤字になっている広告を「まだ余裕がある」と誤認してしまいます。正確な数値は、セラーセントラルの支払いレポートやFBA収益計算ツールで確認するのが確実です。
そもそもACOSは「広告費÷広告経由売上×100」で算出する広告効率の指標です。この式自体には利益の情報は含まれていないため、ACOSが低いか高いかだけでは黒字か赤字かは判断できません。損益分岐ACOSと突き合わせて初めて、その広告が利益を生んでいるかどうかが分かります。
POINTPOINT 損益分岐ACOS=広告前の利益率です。実ACOS(実際に広告運用で発生しているACOSの実績値)がこれを超えていれば、その売上は広告費まで含めると赤字になります。原価だけでなく、販売手数料・FBA手数料まで引いて計算することが最初のチェックポイントです。
計算式と算出手順
損益分岐ACOSを出す手順は、次の順番で統一するとブレません。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ① | 販売価格を決める |
| ② | Amazon販売手数料(正式名称はリファラルフィー。カテゴリーごとにおおむね8〜15%です)を引く |
| ③ | FBA配送代行手数料・保管手数料を引く |
| ④ | 商品原価(仕入・製造・輸送・関税)を引く |
| ⑤ | 残った金額(広告前利益)÷販売価格×100=損益分岐ACOS |
この計算式自体は、Amazon公式ヘルプで明示されているものではありません。ただし、セラーセントラルの「収益計算ツール」でカテゴリーとサイズを選択すると、販売手数料とFBA関連手数料が自動算出されます。そのため、手計算より誤差が少なくなります。正確な販売手数料とFBA配送代行手数料はセラーセントラルのFBAシミュレーターで確認するのが実務上の基本です。

セラサポでできること
手数料がいくら引かれたか、商品ごとに見えていますか
セラサポなら、販売手数料・FBA配送料・保管料を商品ごとに集計します。原価を登録すれば「この商品は広告費をいくらまで使えるか」まで自動で出ます。
具体的な数値例
円建ての具体例を見ると、計算の流れがつかみやすくなります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 販売価格 | 3,980円 |
| Amazon販売手数料(15%) | 597円 |
| FBA配送代行手数料 | 420円 |
| 保管手数料(月額想定) | 30円 |
| 商品原価 | 1,200円 |
| 広告前利益(粗利) | 1,733円(粗利率約43%) |
このケースでは損益分岐ACOSが約43%となり、広告費を800円かけても900円超の利益が残る計算になります。別のシンプルな例も見てみましょう。販売価格10,000円・原価4,000円・手数料等3,000円の場合、広告前利益は3,000円となり、損益分岐ACOSは30%です(出典: goaltech)。
ACOSとROAS(広告経由の売上÷広告費。ACOSの逆数にあたる指標です)は分子と分母が逆の関係にあり、ROAS=100÷ACOSで換算できます。
| ACOS | ROAS |
|---|---|
| 10% | 10.0倍 |
| 20% | 5.0倍 |
| 25% | 4.0倍 |
| 33.3% | 3.0倍 |
| 50% | 2.0倍 |
粗利率の目安としては、30%以上なら優秀、20%前後は改善余地あり、10%以下は危険ゾーンという経験則が実務ブログで紹介されています。ただしこれは一次データ(公的機関や公式発表による裏付けのある数値)ではなく、あくまで経験則である点には注意が必要です。
目標ACOSはどう決めるのか
目標ACOSとは、損益分岐ACOSからさらに確保したい利益率を差し引いた値のことです。式は「目標ACOS=損益分岐ACOS−残したい利益率」となります。たとえば広告前利益率が50%で、広告後も20%の利益を残したいなら、目標ACOSは30%です。損益分岐ACOSぎりぎりを狙う運用は利益がほぼゼロに近づくため、通常は数ポイントの余裕(バッファ)を取ります(出典: goaltech)。
なお、この計算式はAmazon公式ヘルプで明記されているわけではありません。業界慣行として広く使われている式である可能性が高い、という点は留保しておきます。
TACOSと組み合わせて判断する理由
ACOSはキャンペーン単位の広告効率を測る指標です。一方、**TACOS(Total ACOS)は「広告費÷全体売上(オーガニック=広告を介さない自然検索からの売上も含みます)×100」**で算出し、事業全体の広告依存度を示します。損益の最終判断はACOS単体ではなく、TACOSと粗利率(貢献利益率。売上から変動費を差し引いた利益の割合を指します)を組み合わせて行うべきです。
POINTPOINT ACOSだけを下げにいこうとすると、検索順位を支えていた高ACOSキーワードまで止めてしまうことがあります。その結果、オーガニックからの流入が落ち、かえってTACOSが悪化することがあります。「実ACOS>損益分岐ACOS」が続くキーワードを絞る際は、そのキーワードが順位維持に寄与していないか確認してから止めるべきです。
広告には、それ自体の売上だけでなく、他のASIN(Amazonが商品1つずつに割り当てている10桁の商品コードです)や他の販路の売上まで押し上げる「ハロー効果」と呼ばれる働きがあります。この効果は、広告レポート上の「広告経由売上」には反映されません。そのためACOS単体では、広告の本当の効果を過小評価しがちだという指摘もあります。こうした複数指標の突き合わせは、セラサポのような分析ツールを使うと自動化できます。

2026年4月の手数料改定で再計算が必要な理由
2026年4月、Amazon Japanは手数料体系を改定しました。損益分岐ACOSは手数料が変わるとそのまま数値が動くため、下記に該当する商品は再計算が必要です。なお「長期在庫追加手数料」とは、FBA倉庫で一定期間売れずに残っている在庫に追加でかかる保管手数料のことです。
| 改定項目 | 内容 |
|---|---|
| 販売手数料 | 売上合計750円超の全カテゴリーで一律+0.4%(メディア・Amazonデバイスアクセサリ・TVゲーム系は金額問わず+0.4%) |
| FBA配送代行手数料 | 標準サイズ(20〜80cm・5kg以下)は平均約38円引き下げ、販売価格1,000円以下はさらに66円割引 |
| 長期在庫追加手数料 | 対象を26週(約6ヶ月)超に拡大、365日超は10cm³あたり7円増額 |
たとえば1,000円のエレクトロニクスアクセサリの販売手数料は100円から104円に増えます。**750円超の低単価商品を多く扱うセラーほど、損益分岐ACOSが以前より下がっている可能性があります。**これは、広告に使える余地が以前より狭まっているという意味です。改定後の実績値で再計算することをおすすめします(出典: Amazonセラーセントラル ヘルプ)。
計算時の注意点
計算の入力値を間違えると、損益分岐ACOSそのものがずれてしまいます。特に注意したいのが税区分の混在です。
- 大口出品の月額固定費は4,900円(税別)で成約料なし。小口出品は月額固定費なしで1成約ごとに100円かかります(出典: Amazonセラーセントラル ヘルプ)。
- FBA配送代行手数料はサイズ・重量で決まり、小型(25×18×2cm・250g以下)は288円、標準(最大辺45cm・9kg以下)は381〜603円程度が目安です。
- FBAシミュレーター内でも販売手数料は税抜表示、FBA配送代行手数料・保管料は税込表示という非統一があります。Excel等で損益を組む際は、項目ごとに税区分をそろえないと粗利率・損益分岐ACOSがずれます(出典: brandbuppan)。
消耗品のように繰り返し購入されやすい商品では、初回購入時の利益だけで判断しない考え方もあります。一定期間のリピート購入も含めたLTV(Life Time Value=顧客生涯価値。一人の顧客が生涯にわたってもたらす売上の合計のことです)をベースに、損益分岐ACOSを再定義するという方法です。ある試算例では、初回購入のみで計算すると損益分岐ACOSは62%ですが、6ヶ月分のリピートを含めると99%まで拡張できるとされています。ただしこれは新規顧客の獲得を重視した戦略的な広告投資の判断であり、一次データでの裏付けは確認できていません。粗利率をベースにした損益分岐ACOSとは、別の軸として扱うべきです。
まとめ
損益分岐ACOSは、原価だけでなくAmazon販売手数料・FBA配送代行手数料まで差し引いた「広告前利益率」で算出します。原価のみで計算すると損益分岐ラインを過大評価し、赤字広告に気づけません。目標ACOSは損益分岐ACOSから確保したい利益率を引いて設定し、判断はTACOSや貢献利益と組み合わせて行うことが重要です。2026年4月の手数料改定を機に、特に低単価商品はSKU(出品者が自分で付ける商品の管理番号です)単位で損益分岐ACOSを洗い直すことをおすすめします。
よくある質問
損益分岐ACOSと目標ACOSの違いは何ですか
損益分岐ACOSは広告費をかけても利益がゼロになる境界線です。目標ACOSは、損益分岐ACOSから確保したい利益率を差し引いた、実際に運用で狙う数値です。損益分岐ACOSぎりぎりで運用すると利益がほぼ残らないため、両者は分けて設定します。
ACOSとTACOSはどちらを見て広告を止めるべきですか
ACOS単体で判断すると、オーガニック順位を支えていたキーワードまで止めてしまうことがあります。実ACOSが損益分岐ACOSを超えている期間と、TACOSおよび貢献利益の推移をあわせて確認したうえで判断するのが安全です。
新商品のローンチ期(発売直後の立ち上げ期間)も損益分岐ACOSを守るべきですか
ローンチ期は、損益分岐ACOSを一時的に超える広告投下を許容し、商品が育ってきた「成長期」に近づくにつれて損益分岐ラインへ寄せていく、という商品のライフステージ別に目標を変える考え方が実務では一般的です。ただしこれは、粗利率に余裕があり、TACOSにも余力がある場合に限られます。
2026年4月の手数料改定はすべての商品に影響しますか
販売手数料の引き上げは売上合計750円超の全カテゴリーが対象です。一方でFBA配送代行手数料は標準サイズかつ価格帯によって引き下げになる場合もあるため、一律に悪化するわけではありません。SKUごとに改定後の手数料で再計算する必要があります。
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