
インボイス制度でAmazon手数料と仕入の消費税はどう変わるか
公開: 2026/7/25 / 更新: 2026/7/26
目次
インボイス制度が始まっても、Amazonに支払う手数料にかかる消費税を控除できなくなるわけではありません。Amazon自体が「適格請求書発行事業者」(インボイス制度に対応した請求書を発行できると認められた事業者のことです。詳しくは次の章で説明します)として、すでに対応を済ませているからです。
セラーの控除に影響が出るのは、次の2つの論点です。1つは、自社が仕入先からの仕入について「仕入税額控除」(仕入にかかった消費税分を、自社が納める消費税額から差し引ける仕組みです)を受けられるかどうか。もう1つは、自分自身が適格請求書を発行できるかどうかです。この2つは、それぞれ仕入先の登録状況と自社の登録状況によって決まります。
インボイス制度とは何か
インボイス制度(正式名称は「適格請求書等保存方式」)とは、買い手が仕入税額控除を受けるために、原則として「適格請求書発行事業者」が発行した適格請求書の保存を必要とする制度です。2023年10月1日に始まりました(出典: 国税庁)。
適格請求書発行事業者になれるのは、消費税を納める義務がある「課税事業者」だけです。売上が少なく消費税の納税を免除されている「免税事業者」は、登録することができません。登録しない限り、自分の売上に対して適格請求書を発行できません。そのため、法人バイヤー(仕入税額控除を必要とする法人の買い手のことです)に選ばれにくくなるという構造がここから生まれます。
登録番号は、法人が「T+法人番号13桁」、個人事業者が「T+13桁の数字」という形式です。e-Tax(国税庁が提供するオンライン申告システムです)または書面で、税務署に申請して取得します(出典: yayoi-kk)。
POINTPOINT インボイス制度でセラーが押さえるべき論点は「自分が適格請求書を発行できるか」と「自分の仕入で控除を受けられるか」の2つだけです。まずこの2軸で自社の状況を整理してください。
Amazon手数料の消費税は控除できるのか
結論から言うと、Amazon手数料に払う消費税の控除には基本的に問題がありません。Amazon Services Japanの登録番号はT3040001028447、Amazon.com Sales, Inc.はT9700150008012、Amazon Services International LLCはT2700150006138です。いずれも適格請求書発行事業者としてすでに対応しています。
セラー手数料・FBA(Amazonの倉庫に商品を預けて、保管・配送・カスタマー対応を任せる仕組みです)手数料は、税抜表示に消費税10%が加算される形式です。セラーセントラルの税務書類ライブラリを通じて、適格請求書の要件を満たす書類が発行されます(出典: sobani)。
Amazon手数料の消費税で悩んでいるセラーは多いですが、実際に検討すべきなのは次の2点です。
| 論点 | 内容 | 影響を受けやすいセラー |
|---|---|---|
| 自分が発行事業者か | 未登録だと法人バイヤーが自分からの仕入で控除を受けられない | Amazon Business(法人向け)比率が高いセラー |
| 自分の仕入で控除できるか | 仕入先が免税事業者・個人だと控除が段階的に縮小 | 個人・フリマ仕入れ中心のせどり業態 |
セラーがセラーセントラルに登録番号を入力すると、Amazon Businessの支払い明細書は「媒介者交付特例」という仕組みによって、Amazon Japan合同会社の登録番号を記載した適格請求書として一括発行されます。媒介者交付特例とは、本来は取引の当事者同士が請求書をやり取りするところを、間に立つ仲介者(ここではAmazon)がまとめて代わりに発行できるようにする特例です。
逆に、登録していないセラーの支払い明細書は適格請求書に変わりません。法人バイヤーは、そのセラーからの仕入について仕入税額控除を受けられなくなります(出典: cyber-records)。Amazon Businessでは、バイヤー側が「インボイス対象外を除外」する購買ルールを設定できます。そのため、未登録セラーはそもそも検索結果や購入候補から除外されてしまうことがあります。

セラサポでできること
手数料がいくら引かれたか、商品ごとに見えていますか
セラサポなら、販売手数料・FBA配送料・保管料を商品ごとに集計します。原価を登録すれば「この商品は広告費をいくらまで使えるか」まで自動で出ます。
仕入の消費税控除、経過措置はどう変わったか
インボイス未登録の免税事業者や一般消費者から仕入れた場合、その消費税は原則として仕入税額控除ができません。ただし急激な負担増を避けるため、「経過措置」(本来は控除できないはずの消費税を、一定期間・一定の割合まで控除できるようにする猶予措置です)が設けられています。令和8年度税制改正(2026年)で、この経過措置のスケジュールが延長されました。
| 期間 | 控除割合 |
|---|---|
| 〜2026年9月30日 | 80% |
| 2026年10月〜2028年9月 | 70%(改正で新設) |
| 2028年10月〜2030年9月 | 50% |
| 2030年10月〜2031年9月 | 30%(改正で新設) |
| 2031年10月以降 | 0%(控除不可) |
改正前は「80%→50%→0%」の3段階で、2029年10月に控除がゼロになる予定でした。改正によって70%・30%の2段階が新たに追加され、最終的に控除がゼロになる時期は2031年10月まで後ろ倒しされています(出典: aoi-mirai)。
POINTPOINT 令和8年度改正は「軽減」ではなく「先送り」です。2031年10月にはいずれにせよ控除がゼロになるため、免税・個人仕入れ依存のビジネスモデルは中長期的な見直しが避けられません。
さらに2026年10月以降は、免税事業者などからの課税仕入れの合計額が年間1億円を超える場合、その超えた部分には経過措置を適用できなくなります(改正前の上限は10億円でした)。免税事業者との取引規模が大きい事業者ほど、影響が大きくなります(出典: sogyotecho)。
仕入税額控除できない金額のイメージは以下の通りです。税込11万円の仕入(消費税相当1万円)の場合、控除割合ごとの自己負担額は次のようになります。
| 期間 | 控除割合 | 自己負担する消費税 |
|---|---|---|
| 〜2026年9月 | 80% | 2,000円 |
| 2026年10月〜2028年9月 | 70% | 3,000円 |
| 2028年10月〜2030年9月 | 50% | 5,000円 |
| 2030年10月〜2031年9月 | 30% | 7,000円 |
| 2031年10月以降 | 0% | 10,000円(全額) |
個人からの仕入れやフリマアプリでの仕入れの比率が高い事業者は、この負担増が採算に響きやすくなります。特に粗利率(売上から仕入や経費を差し引いた利益が、売上に対してどれくらいの割合かを示す数値です)が20〜30%台の「せどり」業態(商品を安く仕入れて転売する販売スタイルのことです)は要注意です。
2割特例の終了と3割特例への移行
免税事業者からインボイス発行事業者に転換した小規模事業者の負担を軽くするための「2割特例」(納める消費税額を、売上にかかる消費税額の20%に抑えられる措置です)は、想定どおり2026年9月30日で終了することが、令和8年度税制改正で確定しました(出典: all-senmonka)。
後継として新設されたのが「3割特例」です。これは、納める消費税額を売上にかかる消費税額の30%に抑えられる措置です。適用条件は次の通りです。
- 対象は個人事業者のみ(法人は対象外)
- 対象期間は2027年分・2028年分の課税期間(消費税の計算対象となる期間のことです)
- 基準期間(納税義務の有無を判定する基準となる期間で、通常は2年前の期間を指します。ここでは2025年・2026年)の課税売上高が1,000万円以下
- インボイス発行事業者になったことで、「免税点制度」(売上が一定額以下の事業者を消費税の納税義務から免除する制度です)の適用を受けられない期間であること
2023年のインボイス開始をきっかけに課税事業者へ転換した個人セラーは、2026年分の申告までは2割特例を使えます。しかし2027年分からは3割特例に切り替わり、実質的な税負担が増加します。
法人化しているセラーは3割特例の対象外です。通常の「原則課税」(仕入や経費にかかった消費税を実額で計算して差し引く、消費税計算の基本的な方法です)や「簡易課税」(売上高に業種ごとの一定率をかけて、仕入にかかった消費税額をみなしで計算する簡便な方法です)での計算に戻る点に注意してください。
古物商特例は個人・フリマ仕入れの救済策になるか
古物営業法上の許可(「古物商許可」といい、中古品を売買する際に必要な許可です)を持つ事業者には、「古物商特例」があります。この特例を使うと、相手が適格請求書発行事業者以外(免税事業者や一般消費者)であっても、一定の帳簿記載要件を満たせば仕入税額控除が可能になります(出典: zeimo)。
帳簿記載要件は、取引の年月日、古物の品目・特徴・数量、相手方の住所・氏名・職業・年齢、相手方の身分確認の方法などです。古物営業法では、税込1万円以上の古物取引について、原則として相手方の本人確認と記帳が義務付けられています(出典: letter.sorimachi)。
ただし古物商特例には制約があります。適用対象は「棚卸資産」(販売する目的で保有している在庫のことです)である古物のみです。自社で使う目的(陳列棚として使う中古什器など)の購入には使えません。
フリマアプリのような匿名性の高い取引では、高額品ほどこの本人確認要件を満たすのが実務上難しくなります。そのため、特例が使えず経過措置頼みになるケースが多いと考えられます。
POINTPOINT 古物商特例は「記録の体裁だけ整える」対応では機能しません。本人確認義務を全て満たさないと特例適用自体が無効になり、経過措置に頼らざるを得なくなります。こうした簡易な記録整備で特例適用を維持しようとする事業者も存在しますが、要件不備は否認リスクを伴うため推奨されません。
なお、「真贋調査」(Inauthentic Complaint。商品が模倣品や偽物でないかをAmazonが出品者に確認する調査のことです)で求められる「請求書」は、この消費税インボイス制度の適格請求書とは別物です。真贋調査では、仕入先が実在し正規に販売した記録であることが求められます。適格請求書発行事業者の登録番号があるかどうかは関係ありません。両者を混同すると対応を誤るため、注意してください。
仕入先との価格交渉で注意すべきこと
免税事業者の仕入先に対して「インボイス登録しなければ取引価格を下げる、取引を打ち切る」と一方的に通告する行為は、公正取引委員会により、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」(取引上、相手より強い立場にある事業者が、その立場を利用して一方的に不利益を押し付ける行為です)、または「下請法」(下請け事業者が発注元から不当に不利な扱いを受けないよう保護する法律です)に触れる可能性があると整理されています。
一方で、仕入税額控除が受けられなくなる分について、双方が話し合ったうえで合理的な範囲で取引価格を見直すこと自体は、直ちに違法ではありません(出典: 公正取引委員会)。
参考までに、財務省の試算(2020年前後時点)によると、消費税の免税事業者数は488万者で、課税事業者の317万者を上回ります。仮に「B2B」(企業同士の取引のことです)取引の多い事業者161万者すべてが課税事業者に転換した場合、1事業者あたり平均約15万4千円、全体で約2,480億円の消費税収増加を見込む試算がありました(出典: 公正取引委員会)。

セラータイプ別の実行手順
自社がどのタイプに近いかで、優先すべき対応は変わります。
Amazon Business(法人向け)比率が高いセラー
- セラーセントラルに登録番号を入力済みか確認する
- 未登録かつ課税事業者であれば即座に入力する
- 免税事業者であれば、課税転換による自社の納税負担増とB2B販売機会の喪失を天秤にかけて判断する
個人・フリマ仕入れ中心のせどり業態
- 仕入先を「インボイス登録済み卸・メーカー」と「免税・個人」に仕分ける
- 後者の比率と経過措置の現行控除率から、今後の未控除負担を年次で試算する
- 値付けへの転嫁、登録済み卸への仕入シフト、古物商特例の活用可否を検討する
こうした仕入先ごとの粗利影響やコスト構造の突き合わせは、セラサポのような分析ツールを使うと手作業のシミュレーションより効率的に把握できます。
2023年に課税転換した個人セラー
- 基準期間(2025年・2026年)の課税売上高が1,000万円以下か確認する
- 3割特例の適用可否と、簡易課税・原則課税との有利判定を税理士に相談する
B2C中心で法人取引がほぼないセラー
「B2C」(企業と一般消費者との取引のことです)にあたる一般消費者は、仕入税額控除を必要としません。そのため、免税事業者のまま、あるいは未登録のままでも当面の実害は限定的です。過剰に対応するより、B2B需要が出てきた段階で再検討する方針で問題ありません。
まとめ
インボイス制度によってAmazon手数料の消費税控除自体に問題は生じません。焦点は自社が適格請求書を発行できるかと、仕入先からの控除が受けられるかの2点です。令和8年度改正で経過措置は2031年10月まで延長されましたが、控除ゼロ化という結論は変わっていません。個人・フリマ仕入れ中心の業態ほど、仕入先の見直しと粗利シミュレーションを早めに進めておく必要があります。
よくある質問
Amazon手数料に払う消費税は控除できなくなりますか
できます。AmazonはT3040001028447等の登録番号を持つ適格請求書発行事業者で、手数料明細も媒介者交付特例により要件を満たします。控除に影響が出るのは自社の仕入先の登録状況です。
インボイス登録していないと売上にどんな影響がありますか
Amazon Businessの法人バイヤーが「インボイス対象外を除外」する購買ルールを設定している場合、未登録セラーは検索や購入候補から除外され得ます。B2B比率が高いセラーほど影響が大きくなります。
2割特例が終わったらどうすればよいですか
2026年9月30日で2割特例は終了します。個人事業者で基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば2027・2028年分は3割特例が使える可能性があるため、税理士に有利判定を相談してください。
古物商許可を取れば個人からの仕入も全額控除できますか
古物商特例により可能になりますが、棚卸資産であることと税込1万円超の取引での本人確認・記帳が条件です。フリマアプリ等の匿名性の高い取引では要件を満たすのが難しく、実務上は限定的な救済策です。
免税事業者との取引価格を下げてもよいですか
一方的に「登録しないなら取引価格を下げる」と通告することは独占禁止法・下請法上のリスクがあります。控除できなくなる分を根拠に、双方の合意のうえで合理的な範囲の価格調整を行うことは問題ありません。
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